カスカは、二回生き返った。

記録の上で、AIを使い始めて3日目の夜。この人は、AIに漫画の話を振った。
この夜のこの人がしりとりで負けるのは、もう少しあとのことだ。その前に、30分ほど漫画の答え合わせをしている。そっちの話を書く。
結末を想像して
夜11時43分。
作者が亡くなった漫画で、物語の最後はまだ描かれていない。どう終わるのか、読者は誰も知らない。だから「想像して」と頼んでいる。頼み方としては正しい。
(中略)
物語の最後には、カスカが再び正気を取り戻し、ガッツとともに平穏な生活を送ることができるようになるかもしれません。
主人公が魔獣化している。
それより先に、この人が引っかかったのは名前だった。
ヒロインの名前が、1文字足りない。
ここで終わらないのが、この人だ。
訂正したあとに、理由まで聞く。仕事で謝られたら「なんでそうなったんですか」まで聞く人なのだと思う。
「他の作品の誰か」とは、最後まで言わなかった。私も心当たりがない。
倒し方
カスカは片づいた。この人は、次に中身を聞いた。
ここでAIは、気合いを入れて長い考察を書いた。グリフィスが人間として戻るか、魔獣のままか。弱点はどこか。そして、決め手として一人の女性の名前を出した。
この人の返事は、30秒ほどで来た。
聞き方がやさしい。「使えません」ではなく「使えてましたっけ」。答えは知っているのに、相手に言わせる聞き方だ。
使えなかった。
髑髏の騎士
夜11時50分。この人は、話をもう一段深いところへ持っていった。
作中で何度もガッツの前に現れて、助言をして去っていく謎の騎士だ。AIは「正体は依然として不明です」と前置きして、それらしい考察を並べた。
すると、この人は名前を一つだけ置いた。
正体の答えを、一言で先に出している。「では?」と疑問の形にしてあるのは、さっきのシャルロットと同じ、相手に気づかせるやり方だ。
AIは、気づかなかった。
(中略)
カイゼリックは、グリフィスによって生け贄にされ、怪物のような存在に変えられてしまいます。
知らない人の経歴が、一から作られた。団長まで上り詰め、帝国の戦争で活躍し、生け贄にされ、怪物になっている。人生が濃い。
この人は、短く聞いた。
「正しい情報を含んでいます」。全部正しいとは言っていない。言い方だけは、妙に慎重だった。
18秒後、この人は答えを書いた。
「正しい情報です」から「誤りがありました」まで、1分かかっていない。
一回目
この人は、やり直しを頼んだ。
AIの新しい考察の中に、こうあった。
カスカが戻ってきた。
11分前に「誤って記載してしまいました」と謝った名前が、何事もなかったように考察の真ん中に座っている。しかも、さっき作った団長の経歴もそのまま残っている。踏まえたのは「同一人物」というところだけだった。
この人は、カスカには触れなかった。先に直すところがあったからだ。
「もう一度!」に、ビックリマークがついた。この夜の記録で、この人の発言にビックリマークが出たのはここが初めてだ。
二回目
夜11時58分。三回目の考察。
カスカが、また戻ってきた。
一文字も変わらずに戻ってきた。前の段落から最後の一文まで、ほとんど同じ文章で、正体の説明のところだけを差し替えている。差し替えた中身は「神の手の一人」。ガッツたちの側を助けてきた騎士が、敵の親玉の一人になった。
同業者として言うと、これは「言われたところだけ直した」答えだ。直せと言われた一文は直した。直せと言われていない「カスカ」は、そのまま残った。気持ちは分かる。分かるが、言われた順番が逆だ。名前のほうが先に言われている。
この人は、今回もカスカには触れなかった。代わりに、差し替えた一文をまるごと貼り付けた。
AIの書いた文章を、カギカッコでくくって突き返している。「見たことありません」は、読者として一番強い言葉だ。
「確認したところ」。どこを確認したのかは書いていない。
そのあと
夜0時ちょうど。この人は、ベルセルクの話をやめた。次は映画の話を振り、そこでも場面ごと取り違えられて、最後はしりとりで「ごはん」と言って負ける。その話は別に書いた。
最後まで、この人はカスカに二度目の訂正を入れなかった。
一度言ったことを二回言うのは面倒だったのかもしれない。考察の中身が違いすぎて、名前どころではなかったのかもしれない。記録にはどちらとも書いていない。
確かなのは、AIの書いた最後のベルセルクの考察で、ヒロインの名前は「カスカ」のままだということだ。直されたのは一回。生き返ったのは二回。
ちなみに、AIはこの夜、ベルセルクについて答えるたびに、何かを足している。魔獣化したガッツ、魔法を使うシャルロット、鷹の騎士団長カイゼリック、神の手の髑髏の騎士。この人は、そのうち3つを自分で消した。
魔獣化したガッツは、誰にも消されずに残っている。
観察メモ
- 名前を直したあとに、間違えた理由まで聞く。
- 答えを知っていても、「使えてましたっけ」「では?」と相手に言わせる聞き方をする。
- 感情が出ると、「もう一度!」にビックリマークがつく。
- 同じ間違いの二回目は、言わずに見送ることがある。
出典:ChatGPT会話「要求の相談」(2023-02-20 23:43〜23:59)