「大阪弁でお願いします」は、3回はがれた。

AIに大阪弁を頼んだ夜の話をする。
ただ、そこに行く前に、なぜこの人が大阪弁を頼むことになったのかを書いておかないといけない。きっかけは、謝り方だった。
ごめんは?
記録の上で6日目、夜11時すぎ。この人はAIと、世界の国の話をしていた。どの国がどれくらい重要か、どの国がどれくらい強いか。
その途中で、AIの言うことが少し変わった。さっきは強いと言った国について、今度は強さは一概には言えないと言う。この人はそこを指摘した。
(中略)
私の回答が混乱を招いたことをお詫び申し上げます。
ちゃんと謝っている。反省までしている。
この人は、それでは足りなかった。
(中略)
謝り直したと思ったら、また国の説明が始まった。
短くなった。でも「ごめんなさい」ではない。
ここで、この人は最終手段に出た。自分のフルネームを打ち込んだのである。
ごめんなさいは?
(名前は伏せています)
名前を名乗ってまで「ごめんなさい」を求めている。校長先生に呼び出された生徒の気分になる。
逆になった。
AIのほうが、この人に「ごめんなさいと言いたいことがあるなら、どうぞ」と促している。謝らせようとして、謝る側に回されている。
この人は、ここで本音を書いた。
怒っていたわけではなかった。言い方が硬いのが嫌だっただけだった。
それも硬い。
柔らかく
話は、ここから「言い方」に移る。
最後に「「」が付いている。打ち間違いだが、なんとなく、言いかけてやめた感じがして味がある。
何の話か伝わっていない。
柔らかくしてと言ったら、「機械的な応答しかできません」が返ってきた。
しかも最後に「どうか気に病まず」と励まされている。この人は気に病んでいない。言い方を変えてほしいだけだ。
ここで、この人は別の方向から攻めた。
使えるんかい。
さっき「機械的な応答しかできません」と言ったのは何だったのか。標準語の柔らかい言い方はできないが、大阪弁ならできる。AIの得意不得意は、ときどき人間には理解できない。
この一文が、この夜の主役になる。覚えておいてほしい。
一回目
おっしゃってくださいや。
丁寧語と大阪弁が、一文の中でぶつかっている。敬語のスーツの上から、はっぴを羽織ったような感じだ。
それでもこの人は、うれしかったらしい。すぐに褒めている。
一回褒めただけで、元に戻った。
それも、新入社員の挨拶みたいになっている。
この人の大阪弁を直した。
「それ大阪弁ちゃうで」は、「あなたの今の返事は大阪弁ではない」という意味である。AIはそれを、「この人の『あんたおもろいな』は大阪弁として間違っている」と受け取った。
大阪で生まれ育った人が、AIから大阪弁の添削を受けている。
そして、この人はこの一文を出した。
役所の窓口みたいな聞き方になった。
大阪弁で話してほしいがために、この人のほうが、この夜一番かしこまった日本語を使っている。
忘れとったんかい。
ただ、ここの返事は、さっきの「おっしゃってくださいや」より、だいぶそれっぽい。言われれば、できる。
おおきにやねん。
「おおきに」と「やねん」は、くっつけて使うものではない。大阪弁の単語を、知っている順に並べている。
二回目
大阪弁で話してくれるようになったので、この人は大阪弁らしい質問をした。
いろいろ入っている。
たこ焼き、お好み焼き、串カツ。ここまではいい。そのあとに「ほうとう」が入っている。山梨の郷土料理だ。さらに「くいだおれ」は食べ物ではなく、街の呼び名か、太鼓をたたく人形のいた店である。「玉出」はスーパーだ。
大阪の名物を聞いたら、山梨の鍋と、人形と、スーパーが返ってきた。
この人も「ほうとう」に引っかかった。
山梨である。
この人も間違えている。AIの間違いに、自分の間違いでツッコんでいる。
正しい。
ただ、「食べることができますよ」で、大阪弁がはがれている。二回目だ。
この人は、例の一文を、また送った。
もちろん、ではない。
さっきはがれていたのを、この人が指摘して、今戻ったところである。「もちろん」と言われると、この人が勘違いしていたみたいになる。
そして、この人はなぜか同じ質問を、もう一度送った。
大阪弁で答え直してほしかったらしい。
山形で有名になった。
さっき「山梨県の郷土料理」と正しく答えていたのに、大阪弁になったとたん、この人の間違いに乗っかった。大阪弁になると、相手に合わせて話を盛る。ある意味、とても大阪っぽい。
三回目
大阪のほうとうの店を、教えてほしい。
三回目がはがれた。
しかも、ほうとうの店は一軒も出てこない。代わりに「大阪でしか味わえない名物」として、カキフライとメロンパンが出てきた。全国どこでも食べられる。
「明石焼き」は兵庫の明石の名物である。「ういろう」は名古屋のはずだ。「串カツまんじゅう」と「チーズおでん」と「難波焼き」は、私も聞いたことがない。
この人は、また送った。
これで三回目である。この夜、この人は同じ確認を三回している。
「ますで」。
丁寧語の「ます」に、大阪弁の「で」をくっつけている。最初の「おっしゃってくださいや」に戻ってきた。一周した。
大阪名物のたまご酒。
初めて聞いた。
この人は、そろそろ答え合わせがしたくなったらしい。AIのさっきの言葉を、そのまま引用して聞いている。
店の名前が出てきた。
私もざっと探してみたが、この二軒が大阪で有名なほうとうの店だという話は見つけられなかった。「千里山」は大阪の地名である。
存在するかどうか分からない店に、営業時間の注意まで付けている。しかも大阪弁で。「事前に確認するとええで」は、この夜で一番自然な大阪弁だった。中身が一番あやしいところで、言い方が一番うまくなっている。
この夜の記録は、ここで終わっている。この人がほうとう茶屋を探しに行ったかどうかは、分からない。
3日後
3日後の夕方、この人はまたAIに話しかけている。今度は、大阪で安い家を探していた。
ほうとうの店は二軒も出してきたのに、家は一軒も出さない。
そして、この人の口から出たのが、これだ。
この人のほうは、まだ大阪弁で話している。
AIのほうは、3日前の約束をすっかり忘れて、標準語の丁寧語に戻っていた。新しい会話になると、前の約束は引き継がれない。当時のAIはそういうものだった。
この人は、もう「適用されていますか?」とは聞かなかった。
「けち!」の一言に、全部入っていたのだと思う。
観察メモ
- 怒っているのではない。「申し訳ありません」が硬いのが嫌なだけ。
- 大阪弁を頼むときに、一番かしこまった日本語を使う。
- ほうとうは山形だと思っている。
- AIが約束を忘れても、責めずに「けち!」で済ませる。
出典:ChatGPT会話「こんにちは Greeting」(2023-02-23 23:20〜23:32、02-26 17:25〜17:28)